横浜元町ヒストリー

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横浜元町ショッピングストリート



04 栄枯盛衰 世の流れ 井田益夫

井田益夫さん

スイスにファッションウォッチを求めて

戦後の復興を果たして、再び商売を始めて活気が出てきた元町も、昭和20年代後半になるとパッとしない時期を迎えます。まち全体を良くしていくには元町に看板を出す店一軒一軒のやる気、金融機関の協力などが欠かせません。30年代に入って間もなく、タクシー代が初乗り60円のころに抽選で50円の現金が当たるセール、三種の神器(テレビ・洗濯機・冷蔵庫)をはじめ乗用車を景品に出すなど話題を集めるイベントを立て続けに実施しました。元町の仲間の東奔西走の日々が金融機関をうごかし、資金を得ることができたからでした。

10年返済で借り入れたお金をわずか3年で完済したとき、元町の信用は本物になりました。求心力のあるリーダーのもとでまとまっていた当時の人たちの行動力、結束の強さはいまも語りぐさです。抽選券イベントの成功はまちづくりへの気運を一気に押し上げました。壁面後退による整備には当初、反対の意見もありましたが、徐々にひとつにまとまっていきました。

そのころ私は、商業専門雑誌の出版社が主催する消費者セミナーなどに自腹を切ってよく出かけていました。早朝から太鼓で起こされ、3日連続で商売の何たるかを学ぶ合宿に参加したこともあります。いまも覚えているのは、作家の宇野千代さんが消費者の立場で買い物をしたくなる店、行ってみたくなる商店街とは、といったテーマで話をしていたことです。セールや新商品が入荷した案内は、商店街名で送られるより、行きつけの店の名前で送られてくるほうがうれしい、といった内容だったと思います。

商店街は、多くのお客さまが行ってみたくなるよう工夫を重ね、一つひとつの店はお客さまが喜ぶ商品をそろえ、サービス、接客に気を配るという基本的なことをきちんと行っていればお客さまは支持してくれる、満足してくれるという思いを改めて抱きました。お客さまの望みにきちんと応え、お客さまを大切にしていたからこそ、かつての弁天通りは多くの人出でにぎわっていたのでしょう。横浜を代表する商店街として一時代を築いた伊勢佐木町の商人も、顧客第一を貫いていたと思います。

いまではホームページなどを通じてさまざまな情報を伝えることができますけれども、IT(情報技術)もDM(ダイレクトメール)も、商売のアピールに役立てる道具です。使いこなすためのアイデア、人材が大事だろうと思います。

よく遊び、よく働く

オリジナリティといえば、遊ぶことにも半端じゃない人が多くいました。プロ歌手のバックバンドでギターを弾いていた石川町の酒屋のオヤジとか、戦後間もなく外車を乗り回していたヤツとか、革ジャンをはおって陸王の750ccバイクを走らせていたヤツとか。私は、代官坂にできたクリフサイドに息子を寝かせてからカミさんと出かけたときもあります。二人で踊って遊んでいるあいだに目を覚まさないかと気が気じゃなかったけどね。仲間が集まれば麻雀を楽しんでいた時期もあります。元町の裏通り(現 仲通り)で医院を開業していた先生もその一人で、よく卓を囲みました。熱中すると時間を忘れて打ちます。麻雀のやりすぎで倒れてもオレが診てやるから安心しろ、なんて言ってました。

仲間をあだ名で呼び合っていたのもそのころです。ワッちゃん(宝田和七郎さん)とか、ショーちゃん(松下庄次郎さん)、先生はペーソン (北村鋼一さん)、私はウォッチ。先生の呼び方が外国人風でしゃれてるでしょ。北を中国読みしてペー、村を音読みしてソン、それでペーソン。ウォッチは家業をそのまま使った呼び方です。

ゴルフもよくやりました。外務大臣まで務めた藤山愛一郎さんの協賛をいただいた藤山杯コンペを、MGC(元町ゴルフクラブ)で行っていた昭和30年代がいちばん楽しんでいましたかね。いまじゃコースをフルに回ると、その後3日は何もできないくらい疲れちゃうんですけど。

竹中のオヤジ(幸雄さん)やポピーのオヤジ(織田城嘉さん)などは、元町頑固オヤジの代表みたいな存在でした。自分の仕事、商品に絶対の自信を持っていたから逸話がいっぱいあります。店先に並べた椅子に腰掛けた人が、物差しを当てて大きさを測ろうとしたら「寸分の狂いもありません」ってピシッと言った竹中さん。同業者が背広か何かの手触りを探っていたら「勝手にさわるな」と一喝した織田さん。人づてに耳に入ってきた話だから定かではありませんが、人柄をよく知る私としては、あり得る話だと思っています。

広く世の中を見ることは、商売に限らず必要なことだと思っています。いつか誰かが言っていたのを覚えているんですが、利益の一割は遊びに投資しろ、と言うんです。稼いだお金を私利をずっと見つめていきたいと思います。

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