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*本コンテンツは、これまで元町公式メールマガジンにて配信しておりましたコラムです。

2022年(令和4年)5月5日号 元町コラム 
横浜開港200年/Y200(2059年)を夢みて!

〜 ヨコハマ元町 流れ行く悠久の風に乗って 〜 ( 1 )         

 「夏も近づく八十八夜♪」、立春から八十八日目を数えた5月2日の神秘的な夜が過ぎて、今日、5月5日は古来から言い習わされている季節で言うところの「立夏」。

  本来の「二十四節気」は中国の「中原」(Chuugen)を中心とした地域の気候をもとに名付けられていて、日本で体感する気候とは季節感が合わない名称や時期があるのはその為です。 「中原」とは黄河の中・下流の流域にある平原のことで、異民族から隔てられていた文明の中心地でした。

※ 横浜元町の碧空の下、可憐に花を開いた五月のバラ、プリンセス ド モナコ。そう、モナコ公国王妃の故グレース・ケリー さんを偲ぶ上品で華麗なな佇まいに心が洗われますーーー。

    この中国の中原の地で考案された季節区分手法のひとつが二十四節気でした。一年が12の「節気」と12の「中気」に分類され、それらに季節を表す名前がつけられているわけですが、重要な中気は夏至と冬至の二至。それを春分と秋分の二分と併せて二至二分(Nishi Nibun)と言い、重要な節気を「立春、立夏、立秋、立冬」の四立(Shiryu)と定めて、この二至二分と四立を併せてたものを八節(Hassetsu)と言い、太陰太陽暦では暦と季節のずれを修正するために用いられています。

     なので、夏至はまだ梅雨の真最中の頃だし、蝉はまだ鳴き始める前。小暑も蒸し暑さが増してはいるものの、まだ「七夕さん」が眺められるようなクリーンな夜空は期待できないし、暑中も地域によっては梅雨寒となることは皆さまご承知の通りです。

     大暑も「最も暑い時候」との説明はとんでもない話で、盛夏のピークは立秋の前後となる事はもはや常識になっています。なので、上手いことに、日本ではこのような現況を調整するために、二十四節気のほかに、土用、八十ハ夜、入梅、半夏生(Hangeshou)、二百十日などの「雑節」という季節区分を取り入れ、本来の旧暦に巧みに組み込んで現在に至っています。

     八十八夜は、昔の日本においては種まきや農作物の成長に関わる大切な日だったことから、あの有名な〜夏も近づく八十八夜〜と唄う「茶摘み」の歌もそんな背景から生まれたのではないでしょうか? 先人皆のワクワクとした季節の高揚感が伝わって参ります。

※ スズランは、君影草(Kimi Kage Soh)、谷間の姫百合(Tanima no Himeyuri)の別名があるスズラン亜科スズラン属に属する多年草の一種。真っ白なすずらんの花言葉は「希望という未来に向かっていく」ーーー。

     さて、身も心も爽やかな5月に入って、北国も遅い春の喜びにあふれている今日この頃、クマ笹の陰に隠れるようにひっそりと咲いているのが鈴蘭です。その 鈴蘭の花が人々に愛されている理由は、あの独特の香りですが、もし、香りが無かったとしても、誰にも気付かれずに咲いているその可憐さだけでも人々の心を引き付けたことでしょう。

     そのせいでしょうか、フランスでは5月1日が「鈴蘭の日」だったことから、5月に入った途端、鈴蘭の花束を持ってパリの街を行き交う人々を多く見かけるようになりました。それは昔からの言い伝えに理由があって、「鈴蘭の花束を貰った人には幸福が訪れる」というもので、元来、日本生まれのこのスズランは「ミュゲ / muguet 」、またの名を「リリードゥバレー / llys de vallees」と呼ばれて、フランス人は中世の頃からヨーロッパにあった花と考えていたことと、この花が小さな鈴の形をしていることから、愛の象徴となり、ケルト人も「幸運をもたらす花」と珍重していました。

     フランスで5月1日が「鈴蘭の日」になった理由は、1561年の5月1日、シャルル9世が正式にこの日を制定し、「一茎のスズランが幸運をもたらす」として、シャルル9世自身が毎年5月1日に、宮廷の女性にスズランを贈ることを決めたことに由来しています。

     また、スズランは恋人たちの出会いの花でもあり、ヨーロッパでは長いあいだ「スズラン舞踏会 / bals du muguet」が行われていましたが、それは父兄が口出しできない、年に一度の舞踏会だったのです。この舞踏会では、若い女性は白いドレスを身にまとい、男性は胸もとのラペルホールにスズランの花を飾りました。

      その、そもそもの起源はスズランの日が出来る前から、領主たちは、森でスズランを見つけると家に飾る風習があったそうで、現代でも、春の花で冠を作って恋人に贈る習慣があるのはその名残りと言われています。

     余談になりますが、優雅で豊かな香りのドイツスズランは香水の素材としても愛されていて、「すずらんの香水」として特に名高いのがクリスチャン・ディオールの「ディオリシモ」です。1956年に発売された「ディオリシモ」は、香水史上に残る名香の一つですが、故ダイアナ妃が愛用していたことでも有名です。実は、スズランはクリスチャン・ディオール自身が生涯愛した花でもありました。なので、ディオールは、この香水で「春の野で摘まれたばかりのみずみずしいスズラン」を表現していると明言しています。

     どこの国にも、季節を愛でる風習が人と人の絆をつないでいる事に心が洗われます。

Tommy T. Ishiyama

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

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