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2023年(令和5年)10月20日号 元町コラム
横浜開港200年 / Y200(2059年)を夢みて!

【特集】心安らかに人生を見つめ直す旅への誘(izana)い〜(19)

   幕末以降、明治、大正、昭和、平成と時代が進み、令和を過ごしている現在、激動の時代を振り返るまでもなく、信じられないスピードで季節が 、時代が、未来が、訪れては走り去って行った事がよく理解出来ます。

   人生というものが『旅』にオーバーラップされるのは、それが長い一本道に感ずるからかも知れません。

   人が旅を目指す理由は皆それぞれですが、理由なく、ただひたすら目的の無い旅に出たくなる衝動に駆られる場合も多く、そんな皆さまに後押しをする意味で記すならば、まず、何処でもいいから思い付くままに旅に出ること、何よりその場を一歩飛び出して即、行動に移る事が重要と言うことです。

   加えて、突飛な旅をお勧めしたい理由は、その道中の過程の全てが特効薬を得たように覚醒する思いがするからに他なりません。 もし、そんな機会を得たなら、貪欲にあちらこちらを見てまわりましょう。 そう、ただひたすら、漠然と目の前に広がる景色を眺めて回り、出会う人々と触れ合いましょう。

※ (Photo by Yumiko Hamada / 函館山の初秋)今年は遅いものの一気に色付きそうな北の大地の表玄関・函館の秋。 この港町にも横浜と同じ「元町」が存在する。 かの高島嘉右衛門が開設した横浜〜函館航路の蒸気客船に身を委(yuda) ねてゆっくりと船旅を楽しみたい。 懐かしい友の顔を思い浮かべながら便りを認(shitata)めるのもまた良しーーー。
※ 函館は横浜と歴史を等しくする開港五大都市のひとつ。 捕鯨船の一大基地でもあった函館港に隣接する金森の歴史的レンガ倉庫群は横浜赤レンガ倉庫群と同様に人気観光エリアとなっている。 安政の開国&開港によって外国文化を受け入れた横浜・函館・新潟・神戸・長崎。 共通した街の佇まいに安心感が漂う。 この地に来航したペリー提督の思惑は太平洋で操業している自国の捕鯨船の安全と乗組員の休養、水・食料の確保で、横浜来訪の目的と全く同一であった。 米国の捕鯨の目的は当時の主要品であったランプ用の油の奪取だけ。 米国は当時から鯨を乱獲をしていた事が判るーーー。


   さて、田舎や山里には見慣れない物がたくさん存在していますから、出来れば気に入った宿に長逗留(naga tou ryu) して、知り合いに返事を期待しないで気楽に手紙でも書きましょう。 そんな折の文面は、「私が都にいないからって、あの事とかその事とかを都合よく忘れないでネ!」なんて古人(inishie-bito)を気取って書いたら面白い。

   旅先でこそ感性は研ぎすまされ、要るものはいるし、要らないものはいらない事がハッキリと見えて来る筈。 これまでモヤモヤしていたものもクリアーに見えて来ますから、そんな勢いを駆って思い切って寺や神社にひっそりと籠(ko)もるのも悪くありません。

   そして、旅にはいつもの習慣で何か価値ある一冊を携えたいところですが、秋と言うことも考慮して、毎度の『徒然草』(Tsurezuregusa)は如何でしょうか。 そこには、 旅の本質というか、冒頭で述べたものがハッキリと書かれていることに気がつく事でしょう。

    徒然草のどの段落を読もうかと目をつむり、見当をつけてやや前半部分をエイヤーでパッと開き、それが『15段』だったら幸せです。

  つまり、『いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ目さむる心地すれ』で始まる段落がそれで、短いし、書いてある事が的を射ているので絶対に楽しい筈です。 実は、冒頭で述べた部分がその15段を垣間見て頭に浮かんだ一節でした。

※ 毎度お馴染みの筆者のデスク。 そう言えば、原稿を書くだけで手紙はもう記憶に無いくらい書いたことが無い。 ある意味、通常は物置き化している訳だが、新しい季節の訪れを実感出来たせいか今日は珍しく整頓済みの朝を迎えているーーー。

   さすがに、寺社にこもったり潜り込むわけにはいきませんが、知らない土地で知らない店に飛び込んだり、良さそうな宿に見当をつけながら泊まることは寺社に潜り込むのに似ています。

    それは、国内は勿論、海外であったとしても何ら変わりはありません。

   徒然草の本文にもこうあります、、『旅先でこそ、感性が研ぎ澄まされる』と。 確かに空気は違うし、言葉も方言が新鮮に聴こえる筈です。

   食べ物も自然と美味しく感ずるし、見たことも聞いたこともない名前のお酒が、どれを頂いても美味な事でしょう。 感性が研ぎ澄まされているので何事も神様が描いた筋書き通りと錯覚し、全てが運命的に遭遇した奇跡のようにあなたの目の前に現れる事でしょう。 

 そんなヒントを胸に、さて、皆さまは旅のお供に何を持っていらっしゃいますか?

Tommy T. Ishiyama

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