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*本コンテンツは、これまで元町公式メールマガジンにて配信しておりましたコラムです。

2022年(令和4年)8月5日号 元町コラム 
横浜開港200年/Y200(2059年)を夢みて!

〜 ヨコハマ元町 流れ行く悠久の風に乗って 〜 (7)         

     Y.I.T.C. 横浜山手。

     今年は特に、梅雨が終わったのか終わらないのか?から始まって、もう使い古された言葉になった感があるのが「異常気象」の夏。

     それでも、今朝の元町は、真夏の白い入道雲の下、涼やかな風が山手の木立の間を縫うように降りてきてストリートに吹き渡っています。

     横浜山手、本牧を一望するこの丘の上に「Y.I.T.C. ワイ・アイ・ティ・シー」(Yokohama International Tennis Community)が創立されたのは1878年(明治11年)のこと。以来、この日本テニス発祥の地は今日まで変ることなく、軽やかなラケットの音を古木ヒマラヤ杉の森に木霊させながら時の流れを見守り続けています。 

※ 歴史的な大木、ヒマラヤ杉が見守る「横浜山手・テニス発祥記念館」。テニスウエアやラケットの変遷をひと目で把握する事が出来るーーー。

     日本最初のテニスコートが誕生したこの年は、英国のあのウィンブルドン大会がスタートした翌年のことですので、英国でもコートの数はまだまだ少なく、テニスは貴族や極めて限られた一部の人々のスポーツでした。しかし、横浜・山手にはY.I.T.C.のほかに、シモンズ邸にもすでに立派なテニスコートが存在していたのです。

     シモンズとは宣教医を退いた後に、横浜十全病院(旧横浜市大病院の前身・現在の横浜市立大学附属市民総合医療センター)の院長を務めたドクター・シモンズのことで、あの、ヘボン式ローマ字の考案者、ヘボン博士の親友でもあり、お隣り同士だったシモンズ博士のことですが、そのシモンズ邸のテニスコートに集う山手居留地のご婦人達の中には、ヘボン博士の夫人は勿論、後に勝海舟の息子・梅太郎と結婚することになる東京住まいの令嬢クララ・ホイットニーが居たのですから、日本近代史と欧米の大きな接点がここ横浜山手にあった事は確かです。

     緑のカーペットを敷き詰めたような美しい芝生。まばゆいローンコートを見守るように薔薇と紫陽花(ajisai)の花が華麗に咲き乱れているのはウィンブルドンを大いに意識した造園技術のなせる業(Waza)ですが、当時の横浜の人々がこの美しい山手公園一帯を「花屋敷」と呼んでいた理由がここに存在しています。

※ 薄緑色の風が吹きわたる日本の夏。遠い時代からの贈り物が今年も順調に育っている。「皆んなーー頑張れしーーー」(甲州弁)、急峻な笹子峠を何台もの大八車で越え、横濱に良質な甲州繭産のシルクを届けて日本の近代化に貢献した甲州商人の声が聴こえるーーー。

     1907年(明治40年)頃には山手に居住する外国人女性は既に700人を越えており、現代にもその姿を伝えている大きなヒマラヤ杉の下で、テニスを終えてくつろぐ人々の姿は今昔を問わない横浜にピッタリの昼下がりのワンシーンですが、ビスケットが添えられたティーと共にその語らいは尽きる事なく、古い歴史書の中には、そのビスケットが当時の横浜の老舗輸入雑貨店、通称「レンクロフ」と呼ばれていた「レン・クロフォード」から取り寄せられたものであることが記録されています。  

     英国人が経営する高級な、そしていかにも当時の横濱らしい輸入雑貨店と山手のテニスコート。そこに暮らし、スポーツを楽しむ人々の姿こそ変わったものの生きている心は皆同じ。時代は、そんな人々の営みを見守りながら今日も静かに時を刻んでいます。

     「ポーン、ポーン、、」。 心地よいテニスの打球音がヒマラヤ杉に木霊して、時を知らせてくれる大きな柱時計の様にも見えて参ります。

     Y.I.T.C.を訪れた現代の愛しい友との語らいとその笑顔、そして、全てを優しく包んでくれる歴史感漂う山手の丘の存在感は、時代を超えた多くの絆が貴重な想い出とともに綾をなし、時間という玉手箱の中に大切に納められているような、そんな実感を彷彿とさせてくれます。

※ 浜っ子に人気の季刊誌、神奈川新聞社発刊の「横濱」ーーー。

    「いつの日も、いつの時代も横浜・元町」、そして山手、、。

     ある日、ふと浮かんだ言葉をそのままキャッチコピーに、人気の季刊誌「横濱」(神奈川新聞社刊)で、元町のイメージ広告として採用していた事を思い出した次第です。

Tommy T. Ishiyama

 

 

   

 

 

 

 

   

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