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*本コンテンツは、これまで元町公式メールマガジンにて配信しておりましたコラムです。

2022年(令和4年)11月5日号 元町コラム 
横浜開港200年/Y200(2059年)を夢みて!    

  秋の陽射しの中で、、、。

  「ホッ」とする時間があるってとても大切な事だと思うのです。それは、ふとした瞬間に偶然、出会い、その時に感じた突発的な心理状況なわけですが、本来は、いつも普通にそこにあるものなのに気が付かず、今日、たまたま、心の琴線に触れて感動を得たわけですから、何かに思いを巡らせ、気持ちが和らいだりするのは、その対象となったものの存在以前に、こちら側の心の位置が何処にあるかが重要で、自分の心のゆとりや穏和な気分を育(Haguku)むキャパシティが充分に確保されているかどうかで左右されるものなのではと思う次第です。

※ 空がいっぱい、、。 正面に見えるゲートの上には元町の不死鳥、真北を目指す「ステラマリス」が。 右の建物は元町プラザ、横濱開港時には現在の外国人墓地など、広い境内を有する増徳院(高野山真言宗準別格本山)があった場所に建つ。 9世紀の初頭(大同年間)に建立された増徳院が関東大震災で壊滅し、現在の南区平楽に再興されたのは震災後の1928年(昭和3年)のこと。 写真左の建物の背後には、1972年(昭和47年)に再建された薬師堂が新たな時を刻んでいるーーー。

     空が広がる昼下がり、元町ストリートならではの穏やかな秋の陽射しが、今日も柔らかく降り注いでいます。

     寒さがすこしずつ増して来ても、温かな風情の中、買い物のひと休みのついでに「編み物」をしている若いお母さん方が少し増えた気が致します。 スヤスヤと気持ちよく眠っている赤ちゃんのベビーカーを、時々、前後に動かせながらの編み物、、何が完成するのか、つい尋ねたくなりそうな、陽射しが穏やかなストリートでのそんな風景こそ、本当の温かさを感じさせてくれる瞬間に違いありません。

     昔懐かしい童謡にも、「夜なべ仕事」でお母さんが手袋を編んでくれた風景が歌いこまれていたり、TVドラマのワンシーンにも、コートの襟に温かいファーを付け替えている映像が流れたり、ひとつの季節の風物詩としてそんな風景が情感豊かに描かれていました。 慣れ親しんだ童謡の数々も、ひとつずつ遠い景色になって行くと同時に、「夜なべ」という言葉も、はるか遠いところへ行ってしまった感がある昨今です。

     古来、ニッポンには風情ある季節の言葉が多く、今やブームとなっている俳句の世界に詳しい皆さまは、「季語」というくくりで沢山の季節の言葉を使い分けていらっしゃいますが、「夜が寒い」と書いて「夜寒(よさむ)」とは、まさに今頃のこと。 もっとも旧暦の11月ですから真冬に近いわけですが、日中は感じられなかった寒さが、夜になって急に冷え込んで来て、際立つような寒さを感ずるという繊細な情感がそこに表現されているわけですから、奥深いものを感じます。

※ 茜雲(Akane-Gumo)の下、大勢の皆さんに見送られて出航する飛鳥II。 見知らぬ者同士が手を振り合い、「行ってらっしゃーーい」の声が飛び交う横浜港大桟橋・くじらの背中。 沖へと曳航(Eikoh)されて行く飛鳥の向こうにランドマークタワーが顔を出したーーー。

     前述の、「かあさんが夜なべをして、手袋、編んでくれた〜♪」と歌う童謡が実感できた時代があって、それが手編みから機械編みになり、やがて国産の既製品時代になり、現在は、アルパカならペルー原産の現地製造品が直輸入され、カシミアやウールは中国を筆頭に中央アジアや英国スコットランドからといった具合に変化して参りました。

     それと同時に、母親が、あの圧倒的な労働量で苦労を強いられ尊敬された時代は、完全に過去のものになってしまったようです。

     この秋は、季節を楽しみながら冬の準備に勤(iso)しむ若いママさん達に混ざって、陽だまりのテラスや公園で編み棒を持つのも素敵かもしれません。 自分で編みあげたマフラーや手袋など、手編みの作品は、そのプロセスで編み込まれて行くその時々の思いや心があるので、一層、温かな作品に仕上がっていることは確実です。

     今年も、良い季節が訪れてくれました。

Tommy T. Ishiyama

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