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*本コンテンツは、これまで元町公式メールマガジンにて配信しておりましたコラムです。

2022年(令和4年)7月20日号 元町コラム 
横浜開港200年/Y200(2059年)を夢みて!

〜 ヨコハマ元町 流れ行く悠久の風に乗って 〜 ( 6 )         

 

     日本からは遠く感ずる北ヨーロッパ、スカンディナヴィア半島に位置するスウェーデン王国は、西にノルウエー、北東にフィンランドを配し、南西にカテガット海峡を挟んでデンマークに接しています。

     東から南にかけてはバルト海があって、対岸のバルト三国、ポーランド、そしてドイツとは、その立地の関係から友好的な関係が保たれています。

     スウェーデンの国土は日本の全面積に北海道をもうひとつプラスした大きさで、そこに、僅か約1千万人が住んでいる程度ですから、東京都の人口が1千4百万人弱という事を考えると、東京都民全員が日本の全域に散らばって住んでいるような清々しい広さと環境があるわけですから羨ましい限りです。

     スウェーデンの民族音楽は、フォルクムジーク(folkmusik)と呼ばれて、民間伝承舞踊のフォルクダンス(folkdans)、つまり、フォークダンスと深いつながりがあります。

     フォルクダンスの形態で有名なのはポルスカ(polska)で、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなど、さまざまなバリエーションがありますが、スウェーデンのポルスカはワルツ。 しかし、ポルスカはより精力的に、そしてそれほど厳粛には踊られません。 そのステージングと振り付けは、エレガントなヨーロッパのサロンで登場した貴族のダンスよりも、いくつかの伝統的なバルカンダンスのそれに近いものを感じます。

     スウェーデン独自の楽器として有名なのはヴァイオリンやヴィオラに似た音が出るニッケルハルパ (nyckelharpa)で、ニッケルとは「鍵盤」のこと。4弦プラス12本の共鳴弦を鍵盤で抑えて、弓を引いて奏でます。

     スウェーデンはポピュラー音楽業界にも一石を投じていて、1960年代のエレキギターブームの折には、当時、一世を風靡した「スプートニクス」と言う名のバンドが登場し、宇宙サウンドや、朗々とした北の大陸的なサウンドの「霧のカレリア」などのヒットでエレキインスト界を席巻し、1970年代にはABBAが、また、1990年代中期にはエイス オブ ベイス が、ザ サイン(The Sign) で全米シングルチャートの年間第1位を獲得するという偉業を成し遂げています。

※ 元町ストリートを流れ行く風がアコースティックなサウンドを運んで行く。幼い姉弟がお行儀よく佇み、不思議そうに耳を傾けている。楽曲が持つ力には国境も人種の壁も無いーーー。

     夜の帳(Tobari)が降りて元町が深夜を迎える頃、スウェーデンの首都、ストックホルムでは午後6時を前にして、ディナーのジビエ料理の準備に大忙しの頃。国土が南北に長いスウェーデンの伝統的料理は、北部地方がトナカイをはじめとするジビエ料理。それに対して、南部が新鮮な野菜が重要な役割を果たすなど、対照的な嗜好や味付けがなされています。

     例えば手作りのミートボールに、酸味の刺激あるグランベリーソースに似た「リンゴンベリージャム」を添えますが、そのジャム(Lingonberry jam, スウェーデン語: lingonsylt, ノルウェー語: tyttebærsyltetøy, エストニア語: pohlamoos, フィンランド語: puolukkahillo )は、 コケモモ (リンゴンベリー)から作られる スカンジナビア料理の定番で、コケモモは北ヨーロッパ 内陸の森林地帯に豊富に自生していますから、簡単にジャムに加工できるし保存も容易、ビタミンCが豊富な万能食材と言うことが出来ます。

     スウェーデン人の昔からの寛容さのおかげで、フランス料理から今日の寿司やカフェラッテ、ファーストフードのピザやホットドッグ、ケバブやファラフェルなどの小規模レストランの人気が高まっている現実があります。

     そんなスウェーデンから、ノルウェーを右に眺めながらスカゲラク海峡を行き、北海を渡れば、もう、グレイトブリテン島に到着です。

※ おしゃれな英国調の夏、、ヨーロッパが香るテイストを常に届けてくれるのはキタムラ本店さんーーー。

     更に、スコットランドを横目に、一気にロンドンを目指せば、英国、テムズ川で800年も続く伝統行事、エリザベス女王が所有する白鳥の個体数を調査する恒例の「スワン・アッピング」も終わって、今、本格的な夏を迎えています。この恒例の王室行事は、 伝統的な真っ赤な制服に身を包んだ担当官らが5日間にわたって白鳥の個体数の調査を行うわけですが、すべての白鳥の家族を「水から引き上げ、陸に運び、身体を測定し、怪我の有無を調べる」わけですから、年に一度の健康診断も兼ねていることになります。

     この行事は、12世紀に英王室がすべてのコブ白鳥の所有を宣言した際にはじまったもので、当時は白鳥は宮中の会食で振舞われていた食材のひとつでした。現在では食用に供されておらず、法律で保護されているので、白鳥は安心してこの健康診断に、毎年、喜んで?協力しているものと想像致します。

※ 元町のベンチでひと休み。過去の遠い時代へも、未来へも繋がっていそうな元町ストリートのベンチは、今や皆のソウルスポットになりつつあるーーー。

     そんな事に考えを巡らせながら、クイーンズ・ギャラリーをサラッと眺めて、”オスカー・ワイルドの足跡巡り”の開始です。19世紀に活躍したアイルランド出身の詩人、劇作家だった彼が、スキャンダルで没落する以前に最後に栄光を手にしたのがこのロンドンでした。まずはバッキンガム宮殿からグリーン・パークを抜け、栄光の場所のひとつ「セントジェームス劇場(St James's Theater)」を目指してビジネス街を周り、アデレード通り(Adelaide Road)を目指しましょう。

     そこで見つけたのは、オスカーのブロンズ像というかベンチ。

     1998年に設置されたらしいこのベンチに刻まれているのがオスカーの、”We are all in the gutter, but some of us are looking the stars" という言葉です。「我々はみんなドブ川の中にいる。しかし、中には星を見ている者もいる」との名言が記されています。皮肉屋の彼にしては、珍しくストレートな言葉で述べている ”星” という言葉が実に印象的だと思う次第ですが、そう言えば各ジャンルの楽曲には、”星” がつくタイトルが如何に多い事か。

     少しの時が流れて、西を目指す元町ゲートのフェニックス、ジュピターの視線の先には、大きく傾いた太陽に変わって、満を持したように金星が光り輝く時間を迎えました

     元町ストリートに設置されている緑のアーチに包まれたベンチに座って、思いを馳せる北ヨーロッパと英国の夏。さて、夏の夜空を見上げて、皆さまはどんな『星』の楽曲を思い浮かべるのでしょうか?

Tommy T. Ishiyama 

   

 

 

 

 

   

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