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2024年(令和6年)9月20日号 元町コラム
横浜開港200年 / Y200(2059年)を夢みて!

モトマチのフェニックス 〜不死鳥の翼に乗って〜(18)
 〜 ヨコハマのシンボル、薔薇の花への想い 〜

 山手の丘は元町ショッピングストリートを見守りながら、今年も様々な品種の秋バラの季節を迎えようとしています。 

 みなとみらい線・元町中華街駅、元町改札口を出て直ぐのエレベーターで上階のアメリカ山公園に降り立ち、一帯に咲き誇る花々を眺めながら「みなとの見える丘公園」から山手一帯の散策を楽しみましょう。 折しも涼しい風が通り過ぎ、薔薇の名所「イングリッシュローズの庭」では秋の草花特有の落ち着いた色彩の中に可愛らしい形状の花々が咲き乱れて、新しい季節の到来を告げています

※ 白に淡い覆輪が入る「マチルダ」は、特に秋にピンクが色濃くなるものもあって、毎年の開花が楽しみなバラの一種となっているーーー。

 「秋バラが一番!」という皆さまの格好のビューポイントはイギリス館から山手111番館の後庭を結んでいる「バラとカスケードの庭」で、高低差を充分に考慮したこの美しい庭は秋バラをはじめ愛しい秋の草花で満ち溢れています。

 一方、横浜の開港と同じ時を今日まで刻んでいる北海道・函館に目を移すと、横浜より季節を一歩先んじるように夏から秋への準備が完了し、目を楽しませてくれるのが北のエキゾティックな港町を自負する「元町公園」や「旧イギリス領事館」(函館開港記念館)の風情で、頂戴した一葉の写真には函館山の山懐(Yama-futokoro)に咲く一輪の薔薇が。 美しさを柔らかく際立たせて凛と輝く一輪の薔薇にこの地を愛する皆と同じ積年の愛を感じます。

※ ローズガーデンがある函館市旧イギリス領事館(開港記念館)では、つるバラや木立バラ、60種153株の美しい花が季節を選んで咲き誇っている。 今年も旅情を誘う様にソフトピンクの可憐な薔薇が開花したとの美しいお便りを頂いたーーー。(Photo by Yumiko Hamada Esq. / HKD)

※ 横浜と等しく開港以来の時を刻む函館市。 旧イギリス領事館は横浜と同じ1859(安政6)年の函館開港とともにアメリカ、ロシアに次いで3番目に開設された在函館の外国領事館だった。 1992年に改装され、現在は開港記念館として一般公開されているーーー。

 バラは咲く時期によって大きく3つのタイプに分かれ、4月中旬から6月までの期間、年に1度だけ開花するものが「一季咲き」。 原種やオールドローズと呼ばれる古い品種のバラの多くがこのタイプで、一季咲きの中でも夏から秋にかけて不規則に花を咲かせるものは「返り咲き」と呼称されています。

 また、気温が15℃以上などの一定の条件の元で、いずれの季節にも繰り返し花を咲かせるのが「四季咲き」。 10月から11月にかけて見頃を迎えるこの四季咲きを中心に「返り咲き」の品種を加えた総称を「秋バラ」と呼び、愛好家に珍重されています。

 春から初夏にかけてのバラは冬の間に蓄えたエネルギーを発散して一気に開花するので花数も多くサイズも大きめですが、暑い夏を過ごし、気温が下がり始めた頃にやっと蕾を作る秋バラは花のサイズがやや小ぶりで、同時に花数が少なく花の色も濃くなるという特徴があります。 秋バラは気温が低い時季ゆえに花の形が整い、ロマンティックな雰囲気を湛えながら長い期間咲いてくれるので愛おしく感ずる皆さまも多い事でしょう。

 バラの起源は恐竜の絶滅以前、今から約7,000万年前から約3500万年前の頃、人類がこの世に登場する遥か以前から地球上に存在しており、チベットの周辺や中国の雲南省からミャンマーにかけて野生の原種が多く生息していることから、このエリアが生まれ故郷の可能性が高いと言われています。

 また、日本における最古のバラの記述は西暦700年代の「万葉集」や「常陸風土記」に登場し、源氏物語や枕草子にも「そうび」(薔薇)の記述が見られる事から、中国から渡来したコウシンバラが日本の薔薇の起源だと考えられています。

 実に、日本には原種である野バラが多く存在し、宮中などで栽培されていた珍しい品種が江戸時代になって人気を博し、競う様に広く栽培されるようになりました。 また、江戸末期には西洋バラも栽培されるようになり、明治時代の文明開化とともに薔薇が頻繁に輸入されるようになった経緯があります。 加えて、明治中期になると薔薇の栽培方法のノウハウ本が出版され、昭和初期にはすでに現在のカタログ販売のような販売形態も存在したというから驚きです。

 近代になって、栽培が不可能と思われていたブルーローズの誕生を見るなど、バラを愛する人々の限りない探究心と情熱によって想像を絶するようなバラの美しい姿を楽しむことが出来る事は幸せです。 

 ところで、日本がバラの自生地として世界的に有名というのはご存知でしたでしょうか? 現在、世界には約250種の原種を含め19,000種以上の薔薇があるとされていますが、野生バラの原種の存在が掛け合わせによる新種誕生の鍵を握っていますので、未来の、更に進化した薔薇を想像しながら、新しい季節の中に希望の一歩を記すことに致しましょう。

Tommy T. Ishiyama

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