2023年(令和5年)12月20日号 元町コラム
横浜開港200年 / Y200(2059年)を夢みて!
【特集】心安らかに人生を見つめ直す旅への誘い(izana)い 〜(23)
クリスマスになるといつも想い出す事があります。
ひとつは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の年、津波で骨組みだけになった宮城県南三陸町の防災対策庁舎近くの空き地に設置された高さ6メートルの鎮魂のクリスマスツリーで、7千個余りのLEDによる柔らかな光が夕暮れの被災地を鎮(shizu )かに照らしていた光景です。 そのツリーは地元の若者やボランティアグループらが帰宅時の会社員や子どもたちに「明るい気持ちを甦らせ、元気になってもらいたい」と企画したものでした。
※ 2023年クリスマス直前の元町ショッピングストリート海側ゲート。 敢然とこの世を照らすクリスマスツリーのように北極星を目指して、今にも飛び発とうとしている元町の不死鳥、「ステラマリス」ーーー。
そして、想い出すもうひとつは、第35代米国大統領、ジョン・F・ケネディ(John Fitzgerald Kennedy 1917年5月29日〜1963年11月22日)を失った年のクリスマスのこと、ホワイトハウスの一角に、多くの魂のように灯りがともされたクリスマスツリーが佇んでいた事です。 外電がそのツリーのシルエットをバックにあの有名なケネディ大統領の名演説を伝えていました。 1961年1月20日のこのJ. F. ケネディによる大統領就任演説はその一部が抜粋され、本人の声にコーラスをフューチャーさせて「Let Us Begin Beguine」(邦題 / 自由の讃歌)のタイトルで1963年にレコード化されるや大ヒットを記録したのです。
その演説とコーラスは歌の中でこう繰り返されています
〜 Together, Let us explore the stars, Conquer the deserts, Eradicate disease, Tap the ocean depths. Together, together, together 〜 皆で、一緒に星々の世界を探検しよう、砂漠を征服しよう、病気を根絶し、深海を開発しよう、皆んなで一緒に〜、でも、最初の100日ではこれらの事は達成できないかも知れない。 更に1000日経っても、私の在任中でも達成できないかも知れない。 さらに、この惑星の上の私たちの生涯が終わってもまだ達成出来ないかも知れない。 だけど一緒に始めよう、皆んなで一緒にはじめる事から始めよう〜
じっくり聴き直すと、リフレインフレーズの最後の「Let us begin」の後に「ある音」が収録されている事が判ります。 そう、熱弁を奮って気合いが入ったケネディ大統領が思わずスピーチ台を叩いた音でした。 この名演説には、有名な「And so, my fellow Americans, Ask not what your country can do for you , Ask what you can do for your country.」(だから、アメリカ合衆国の同士諸君、あなたの国があなたのために何をしてくれるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるかを考えて欲しい)というフレーズがある演説ですので記憶に残っている皆様も多いことでしょう。
※ 2023〜2024・冬 皆さま、どうぞお健やかにーーー。 (スイス・ヴォルカート社製冬ヴァージョンの拙宅秘蔵絵皿)
※ 一方、こちらは元町ストリートの石川町側ゲート、真西にあると言われている黄泉(yomi)の国を目指す不死鳥・フェニックス「ジュピター」ーーー。
人生を旅に例える皆さんが多い昨今、今や、世界の何処を見渡しても前人未到の大陸は無くなり、人間を寄せ付けない秘境も既に皆無となり、残されているのは、まさにケネディ大統領の演説にあった深海や地底深い領域、そして、大空の遥か彼方にある暗黒の宇宙ということになりますが、人類の進化に伴う科学技術力の進歩によって想像を絶するこれらの領域もどんどん解明されて行くことでしょう。
思うに、究極の旅とは未知の世界を解明する旅や科学力を駆使した旅ではなく、アナログ的にひと続きになっている果てしない陸路の旅であり、そのひとつひとつが連続している物語のような旅であって、大自然の営みを物語る氷河や火山によって出来た山岳地帯を行く道や、さまざまな色彩の砂漠を貫き、貴重な野生生物が住む大自然を横切るように連なる道を行く旅の事を言うのでは無いかと実感致します。
その一方で、私たち人類の祖先が伝えてくれている日々の暮らしの中を行く道もあって、その行程の途中で見えてくるものには、大昔に消えて行った民族の謎を物語る遺跡や大宮殿があり、今に続く荘厳な聖堂や古代の交易路などもあって、その道の範疇は全世界に及んでいる事は明白です。
現実的に、身近な世界を見渡して、もし、労力を要する旅が覚悟出来るならパキスタンとインドを結ぶ「グランド トランク ロード」の全長2575kmに挑戦するのも良いかも知れません。 たった4週間ほどの行程に過ぎませんから。
また、1年に1回、秋の紅葉見物を楽しむ旅なら、アメリカのバーモント州の紅葉ツアーは3、4日もあれば充分だし、その気になれば、アメリカン・ドリームが散りばめられているアメリカそのものを感ずる旅、文学と音楽に紡(tsumu)がれた「ルート66」を、起点のシカゴからカリフォルニアのサンタモニカまで旅する大冒険旅行にも胸が震えます。 それは、米国、西部への移住の旅を慣行する農夫たちを描いたジョン・スタインベック(John Ernst Steinbeck / 1902年2月27日〜1968年12月20日/ アメリカ文学の巨人)の名作「怒りの葡萄」のページをめくると、シカゴとロサンゼルスを結ぶこのオールド ハイウエイ、ルート66の存在がより鮮明に浮かび上がって来るので一層明白です。
旅が人生に例えられる如く、人それぞれに異なる人生があって、旅にも百人百様の旅があるわけですが、そこには山もあれば谷もあるし、危険もあれば心の癒しも存在しているわけですからそこに人生がオーバーラップされるのは当然で、旅は次々と世代によって次代へ受け継がれて行く終わりのない人生そのもの。
残り少なくなった2023年の旅を締めくくり、また、人生という新たな旅を引き継ぎながら、やがて迎える2024年も安全で奥深い旅を続けられるように真摯な気持ちで祈りを捧げたいと思います。
皆さまにおかれましては、本年のご活躍とご尽力、大変お疲れ様でございました。 素晴らしい新年をお迎え下さると同時に、どうぞ爽快な旅をお続け下さいます様、心よりお祈り申し上げまして本年の締め括りとさせていただきます。
Tommy T. Ishiyama