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2024年(令和6年)4月5日号 元町コラム

横浜開港200 / Y2002059年)を夢みて!

 
モトマチのフェニックス 〜不死鳥の翼に乗って〜(7

 

〜 杏子(Anzu) の花 

 

「あんず」が話題になる時がありませんか? 例えば筆者の友人家、と言うか名字より崎陽軒の屋号の方が有名ですが、あの横浜名物のお弁当を食べている時など、何から最初に食べるのか?という論争など、最初か最後に食べる具材として皆の意見が両極端に分かれるのが「アンズ」。 最初派、最後派に加えて中間派も存在して賑やかですが、皆さまは如何でしょうか。

 

 更には「苦手なので食べない」という仲間も居て、その場合は次回のお弁当パーティの際には、その御仁の隣に陣取る事にしています。 運が良ければ、大好物の「あんず」が23個も周囲から集まる幸運が訪れて、そんな時は自由に、いつでも食べる事が出来るので幸せです。

※ 濃いピンクと淡い桃色。 お馴染み、S & S. O.氏邸の庭に咲いたアンズの花。 絶品のアンズジャムに変身する実を結ぶこの美しい花の花言葉は「乙女のはにかみ」。 英名「アプリコット」(Apricot)、学名「Prunus armeniaca」。別名、Prunus(プラナス)はラテン語の「plum(プラム/すもも)」を語源としているーーー。

 以前、急に杏子(Anzu)の花が見たくなって新宿から特急列車に飛び乗り、栽培が盛んだった長野方面を目指した事がありました。 それは、300年以上前の享保(Kyoho)年間に伊予宇和島藩(現在の愛知県宇和島市)の姫君が、ご当地、信濃国(Shinano no Kuni)にお輿入れの際に、自分が育ったふるさとの花をお供にとアンズを携え、住まいとなった城の要所要所に植樹したとの話を読んだことがあったからでしたが、残念にも花を観る事が出来ず、空振りに終わった経験がありました。

 基本的に3月20日頃から4月5日頃に開花する花との事ですので、当時は時期を逸していたのが理由だったと思われますが、それが身近で、今、咲き誇っている事に気付き、その美しさに目頭が熱くなって遠景のランドマークタワーがぼやけてしまった程です。

※ フルーツとしての「あんず」を手に入れるのは季節的に困難。 でも、「りんご」と「さつまいも」で作る気まぐれ甘露煮も、おしゃれな小道具があれば完璧。 樺細工の箸ケースから懐石箸を取り出せば、元町ゲート海側の不死鳥「ステラマリス」が目指す北斗七星をモチーフとして埋め込まれている4月の誕生石「金剛石」がキラリと輝く。 由縁ある帛紗を敷き、増田窯(かつて元町代官坂にあった逸品)の中皿の上に季節外れだが大好物の柿の漆器小鉢を鎮座させれば、宇宙と地球の温もりを感じる事も出来るーーー。

 「あんず」は中国の原産の渡来種とされていますが、弥生時代以降の遺跡からも種が出土していますから果樹としての栽培の歴史は相当古いことが容易に理解できます。

 記録によれば、ヨーロッパへ伝わったのはイタリア半島を経由してインドやペルシャから。 また、既に1世紀頃にはギリシャやアルメニアを経由して古代ローマへ伝わっていたし、イギリスへは14世紀の中頃か16世紀の初めに。 更に17世紀には南フランス地方で栽培が開始されており、アメリカ大陸へは18世紀にスペイン経由で伝わった事が明らかになっています。

※ 時代を越えて、、祖父2代〜伯父経由の4代目を守る責任は重いようで楽しい。 横浜の祖父が託した記念の品が山梨の母方を走破し、再び横浜に舞い戻って来てから久しい。 カチコチといつも規則正しく会話を楽しんでいるーーー。

 前述のお姫さまの由縁かどうかは不明ですが、愛媛県宇和島市の市の花として「あんず」が指定されている他、広島県福山市田尻町には「杏の里」が、また、福岡県福津市には「あんずの里運動公園」、熊本県山鹿市には観光施設として「あんずの丘」があるなど人気の程をうかがい知る事が出来ますが、圧倒的なシェアで世界一の産地となっているのがアメリカ・カリフォルニア州です。

 長く同地に居住している友人の話によると、アメリカのあんず、アプリコットの品種は10数種程あって、そのなかで最もドライフルーツに適している品種の一つがブレンハイム種とか。 カリフォルニア州ホリスター地区で生産される大部分が日本へ輸出され、過去3年間の日本への輸出量の平均は推定180トンほど。 しかし、栽培に手間がかかるブレンハイム種ゆえに出荷量が減少しているのは、ひとえにその収益性の低さに原因があるようです。

 収穫からドライフルーツになるまでの工程も人の手に頼ることが多く、他のドライフルーツより高価なものとなってしまう為に、アメリカのスーパーマーケットでもなかなか見つけることができない貴重なドライフルーツになっています。

 さあ、今日はユニオンへあんず製品の探索にお出かけになりませんか。 ドライフルーツとしてのあんず、また、甘さの中に心地良い酸味が美味しいアプリコットジャムなど、世界中からのお仲間が大勢待っている筈。

 1本の古木に咲いたあんずの花が、世界の友人知人が見守ってくれているような存在感で両手を広げている昼下がり、目を閉じると、何処からともなく甘い香りが漂い、心地よい音楽も聞こえて参ります。 それは、静かに、爽やかに、そして力強い大合唱の大きな輪となって力をくれる筈。 そう、あの日、あの時にあなたが歌った青春讃歌のように、、、。

Tommy T. Ishiyama 

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